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作者:タイツの人さん
投稿日時:2007/01/22(月) 02:54:45
備考:シリアス展開に突入。エグ過ぎるぜ!


171 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:54:45 ID:/Rvl0VVW
"新"タイツ仮面・中篇 その2

嵐のように現れ去っていったサムライ男。その一太刀で拘束を解かれたミユキ。呆然とするその他。
「うう~」とタイツだけがまだ怯えた様子でクリスタトスにしがみ付く。身体は大人・頭は子供未満。
「ちょっとちょっとちょっと~、何なのよあれ~」
サムライ男の乱入時に目に見えてたじろいでいたスカラマンガが漸く言葉を発した。
油断しきっていた彼女の心臓はまだバクバクと激しく脈打っている。人を嘗めきった視線も今は弱々しい。
「なぁにスカラマンガ?まさか貴女、この程度でビビったの?」
「う、うるさいわね!驚かされるのが嫌いなだけよッ!」
クリスタトスがさも面白そうに仲間であるはずのスカラマンガを見つめて嘲笑する。
「それでも"烈火"の二つ名を持つ《SPECTOR》の一員?」
ミユキは聞き覚えのある単語に眉を寄せた。《SPECTOR》…スペクター、たしか自称・妹が初めて現れたときに聞いた名だ。
「馬鹿が中二病の発作が起きて考えたみたいな恥ずかしい名前持ち出さないでよ。"血風"…虫唾が走るわ!」
半ば当たり散らすかのような態度で声を張り上げる。それはミユキがこれまで見てきた彼女の姿とは大きく異なるものだ。
スカラマンガは自身に付けられた"烈火"という称号は嫌いではない。ただ、その根本にある『ナントカ兵器』が好かないだけなのだ。
「あ~もう。何するつもりだったか忘れちゃったじゃないのよ~!」
ギラギラと光るネイルアートの施された爪で苛立たしげに灰色の髪を掻く。
その浅ましい様はやはり『どこにでもいるアホとなんら大差ない姿だ』とミユキは初めて会った時の彼女の印象をここで再認識した。
すると、そんな考えが顔に出たのだろうか。スカラマンガが危なげな目つきでミユキを睨んできた。
「ああ…そうそう。こいつを使ってブロ姉を誘き出すんだったぁ。でももう面倒くさくなってきたわぁ」
そう言うと、おもむろに倒れたパイプイスを手に取った。
クリスタトスは無言で待機していたラタとスク――自分の可愛い子猫たちを手で制し、下がらせた。
ミユキはスカラマンガが椅子で殴りかかってくるのかと思った。実際、彼女は椅子を手にじりじりとこちらへ近寄って来る。
「ちょ、ちょっ…これって八つ当たり?八つ当たりよね??」
冗談じゃない、とばかりに距離をとるミユキ。だが如何せん室内という空間では、その距離も知れている。
幸い、クリスタトスとその僕たちは傍観を決め込むつもりのようだ。タイツは―――考えるのも馬鹿らしい。
「クリスタトス、"あんたら"も手伝ってよね…」
椅子を片手に凄むスカラマンガに、クリスタトスは冷ややかな視線を送る。
「―――それは私が決めることじゃないわ。そうよね?ボウヤ?」
声をかけられたタイツはただ、甘えた赤子のように「あぅ~」とヨダレを垂らしながら彼女を見上げるだけだった。



172 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:55:27 ID:/Rvl0VVW
「そういえば貴女、タイツに何してんのよ?」
ミユキは言おうとして忘れていた疑問をクリスタトスに投げかけた。だが…
「あたしを前にして何余裕ぶってんのさ。おばさん」
その行為はスカラマンガに更なる苛立ちをもたらすだけだった。それでもクリスタトスは平然として答えた。
「何って…なぁにぃ?フフフフフ…」
「答えになってなぁ~い!」
あくまで小ばかに態度を崩さないクリスタトス。眼下ではあいも変わらずタイツが熟れた果実のような胸で弄ばれている。
「それよそれ、その愛撫~っ!」
ミユキ自身もだんだんイライラしてきた。内心では『なにこの2人。ムカつく!』と憤っている。
ただでさえ監禁された挙句にいきなりワープ(?)してタイツと合流して、意味不明なサムライに助けてもらって…
そして今、眼前のスカラマンガのようなバカ女にこうして襲われねばならないのか。本当に、頭にくる。
足元ではジャリ、ジャリ、と砂利の音。部屋はかなり荒れていて殺風景で、最初に監禁された部屋と大差ない味気なさだ。
どこを見ても打ちっ放しのコンクリート。ホコリとか砂利(恐らく履物に付着して届いたと思われる)、生活ゴミが散乱している。
そこから受ける印象は一つ。"不快"だ。ただただ、不快。そんな中でこんな馬鹿げた事態に遭うなどと、悪い冗談だ。
「…だから早く脱して、お酒の後にラーメンでも食べないと気が済まないわ。」
ミユキは意を決してファイティングポーズをとった。元来、肝は据わっている彼女だ。臆することはない。
まぁ、タイツと会ってからというもの、(悪の組織に属していた日々からしても)非日常的な事件の連続だった。
ならば、今目の前にいる"ちょっとどころか思い切り頭の悪そうな"小娘など…脅威に値しない。
「どりゃあ~ッ」――乾坤一擲。自分にとって唯一つの闘う術。それは肉弾戦における格闘術。
だが何らかの格闘技や特定の流派を持つわけではない。自前のケンカ殺法が彼女の戦闘スタイルの全てだ。
戦闘の姿勢もてんで出鱈目。ポーズも付けるだけで、そこにはなんの意味も含まれていない。
グッと拳を突き出し、足を踏ん張ってそれらしく構えるミユキの姿は格闘家が見れば戸惑うくらい様になってない。
そもそも格好が会社帰りのスーツのままだ。闘うのに適した姿とは言いがたい。
が、その点は女の子の普段着そのままな容姿のスカラマンガも、コート&スーツという井出達のクリスタトスも同様、のはずだ。
だが彼女達はミユキが想像する限り、異能の持ち主に相違ない。服装や容姿では彼女らの戦闘力は判断できない。
なにせ彼女らの仲間(である筈の)自称・妹のブロフェルドがそうだからだ。
女子高生みたいな姿で、手足から得体の知れない飛び道具を連発する彼女ははっきり言って反則級の強さを持っている。
一度、タイツと彼女による『サガ』シリーズばりの連携攻撃で死にかけたミユキはその力を身を持って知っている。

その点では、ミユキも尋常ならざる生命力の持ち主であるわけだが、それはこの際"どうでもいい"話だ。
とにかく。ミユキはスカラマンガと闘う決意をした。


173 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:56:27 ID:/Rvl0VVW
「あたしとやるつもりなんだぁ~。ミユキおばさま~」
スカラマンガは険しい顔つきでいつも通りの嘗めきった口調で話す。
その様はアンバランスで、とても余裕があるとは思えない。場当たり的だが迫力のある姿だ。
「……。いい加減"おばさん"扱いはよしてくれるかしら。憎たらしい小娘ちゃん~」
ミユキも負けじと胸を張る。本人は自信がないが、彼女の胸はちゃんとお椀の形に膨らんでいる。勢いで小さく揺れた。
「おばさんにおばさんって言って何が悪いのよおばさん。あたしが『おばさん』と思ったらおばさんなのよ。わかった?おばさん?」
「く~っ。……もういいわ。とにかくあんたをやっつけなきゃ帰れそうもないのよね…」
心の中でだけ肩をがっくり落としてミユキはスカラマンガの出かたを待った。いきなり突っ込んで瞬殺されるのは嫌だからだ。
「そうね~。あたしもそろそろ戦っちゃったりして?キャハハハハ…」
下品な笑い声を上げる彼女にタイツが吃驚する。だがクリスタトスはそれを微笑で迎える。
「あなたの出番はまだよぉ、ボウヤ。これからスカラマンガが面白いことをするから見てなさいぃ」
優しげな口調とは裏腹に冷たい感情が見え隠れする声音。しかしタイツはその声に屈託のない笑みを浮かべて応じる。
ラタとスクは、先ほどと変わらぬ様子だ。直立不動でずっとクリスタトスに付き従い、疲れも感じさせず傍にいる。
「キャハハハハ…キャーッハハハハハ!」
スカラマンガの笑い声は止まらない。彼女の口から絶好調なマシンガンのように「ハ」の時が放たれる。
「ちょっと、何よこのコ…」
てっきり椅子を振り上げるものと思っていたミユキもスカラマンガの変容に驚きを隠せないでいる。
だが何が来てもいいように構えは解かず、"自分なりに"善戦する所存を維持する。
それでもスカラマンガは止まらない。燃え上がる火のように熱くヒートアップしていく。
「アッハハハハ!キャッハハハハ!マジで?マジで?テンション上がってきたwwwww」
尋常でない高揚ぶりをみせるスカラマンガ。目は苛立ちで歪んでいてすごく怖いが、大口を開けて大げさに笑う様に
ミユキと、クリスタトスに促されてスカラマンガを見ていたタイツは呆然とした。タイツは目を丸くしている。
「うはwwwwwババアをぶっ飛ばして、ぶっ殺して……キャハハハハハハ!」
その口から物騒な言葉が汚らしく巻き散らかされる。ついでにツバも飛んでえげつない事この上ない。
そして昂ぶりが最高潮に達した時――スカラマンガの能力が発露する。
「そんでもって、燃やし尽くしちゃうしぃーーーーッッッ!!!キャーーーーーーッハハハハハァァーーーーッッ!!!」
じじゅ~っ。ミユキらの耳に聞きなれた音が届く。それはスカラマンガの手足から聴こえてくる。
「これは…!?」
戦慄するミユキ。ラタとスクもスカラマンガの様子を見て、はじめて驚きを示す。が、クリスタトスに「落ち着いて」と諭された。
ジジジジジジ……音は、熱を感じさせるものだ。肉を焼く時、ハンダを施す時……あるいは工場から響くような、そんな音。
それはスカラマンガの手にする椅子やスカラマンガの立っている足元から、徐々に度合いを増しつつ聴こえてくる。
「パイロキネシス―――」
クリスタトスが冷笑を浮かべながらそう呟いたのをミユキは確かに聞いた。



174 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:57:44 ID:/Rvl0VVW
ブロフェルドらとお揃いの灰色だった髪も今は真っ赤に変わって逆立っている。
来ていた服が内側から焼かれて燃え、無残な布切れと化して舞い、方々へ散っていく。
掴んでいた椅子のパイプは赤く変じ、彼女が握力を増すことで力なくぐにゃりと変形して、手を振るとぶちんと千切れた。
ガシャン!彼女から放たれた椅子が部屋の片隅に衝突して派手な衝撃音を立てる。タイツがそれを見て再び怯えた。
「キャハハハハハ!!これがあたしの"烈火"の由縁~!触れただけで身体が焼け落ちるわよぉ~!キャハハハハ!」
何が面白いのか、スカラマンガが笑い続ける。その身体からは服装が取り除かれ、もはや全裸も同然だった。
靴だけが、彼女のもたらす熱に燃えずに残っている。表面が焼け、真っ黒になり、何で出来ているのかわからない物に変わっただけだ。
ゴツ、ゴツ、と硬質な音を立てる姿は厚底ブーツを思わせる。恐らく足場が溶けるのを防ぐ為なのだろう。ミユキはそう思った。
それでも彼女の熱気は辺りに向けて噴出されている。真っ赤になった彼女の裸身を前にミユキは歯を噛み締めた。
「うげ…趣味の悪い能力ね」
現状で自分にできる精一杯のコメントを送る。ブロフェルドとは違う、不気味な力を前に身体は震えていた。
能力の発動によって露わになったスカラマンガの裸身は実にスレンダーなものだった。
無駄な凹凸はないが、魅力的な凹凸もない。いろんな意味では実に勿体ない姿をしている。
以前ブロフェルドと自分は姉妹だ、とスカラマンガは言っていた。確かに、体型はほとんど同じだ。
「胸はウチの子に分があるかもしれないわね…」
額の汗を拭いながら、迫る熱の塊を前にミユキはどう攻めていいか考えあぐねていた。
頭の片隅でサムライ男の再来も考えたが、どうせ無駄な願いだし、今のスカラマンガに刀が通じるかも怪しい。
(自力で抜け出すしかないわね…)
クリスタトスの胸に埋もれるタイツをちらりと横目で盗み見ながらもミユキはますます焦っていった。
「ホラホラホラホラ、さっきの勢いはどうしたのおばさん!?アッハハハハハハ~ッ!」
この場においてスカラマンガだけが絶好調だった。いや、もはやこの部屋は彼女の世界と化していると言っても過言ではない。
室温はどんどん増し、真夏の空を幻視できるほどに暑くなっていく。汗が噴きだし、不快度がピークに達する。
(彼女の言ってる通り、触っただけでも大ダメージだよね…それなら!)
ミユキは周りに散らばるゴミに注目し、手始めにスカラマンガが捨てたパイプ椅子の残骸に着眼する。
スカラマンガ自身は「キャハハハハハ!」と笑い、ゆっくりとミユキに向けて歩を進める。
だが自分から襲いかかろうとはしない。あくまで相手を馬鹿にした態度をとり、ミユキの周りをウロウロするだけだ。
クリスタトスはスカラマンガのその様を「悪い癖ね…」と呆れた調子で評した。
それを知ってか知らずか、スカラマンガは笑いながら視線をミユキの身体の各所に向けて
「どこから蒸発させようかなぁ~~~~っ?」などと冗談めかしている。時折、手を伸ばすが本気で届かせる気はないようだ。
一方、ミユキは椅子が熱くないことを指先で確認するとすぐさま手に取った。
「そぉんなクズでなにしようってのォ~~~?………バッカじゃないの?―――ババア!」
ミユキの抵抗の意志は鼻についたのか、突然感情が激化したスカラマンガが"本気で"手を伸ばした。
その速さは普通に人が手を出すような動きで、特別速いわけではない。ただ、接触してしまうこと自体が脅威なのだ。
ミユキはそんな彼女と距離をとりながらも、「ひっ」と短く悲鳴を上げながらパイプ椅子を勢いよく振り上げた。


175 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:58:52 ID:/Rvl0VVW
ミユキが振り下ろしたパイプ椅子は、その勢いも空しくスカラマンガに軽々と受け止められてしまう。
ガシッ!とそれなりの衝撃音がしたが当の本人には大したダメージを与えられていないようだ。
触れた途端に熱が伝わる――咄嗟に椅子とスカラマンガとを引き放そうとしたミユキだがスカラマンガのほうが上手だ。
熱い掌でしっかりと椅子を掴む。見る見るうちに赤くなりながら歪む金属のパイプ。
ぎょっとしたミユキの――そのぎょっとしている間が問題だった。掴みっぱなしだった手に容赦なく熱が伝達する。
「――っっ!きゃああっ!」
苦痛に悲鳴を上げて反射的に手を離す。だが「ベリ…」と嫌な音を立てて両手の皮が剥がれた。
それほどまでに、スカラマンガのもたらす熱は強い。椅子は再びスカラマンガに放り投げられ、壁に激突してぐしゃぐしゃになった。
熱で全体が柔らかくなった椅子は簡単にひしゃげて椅子と分からぬまでに変形して地に落ちた。
「あっ…あああ…」
ミユキの戦意は手の皮と一緒にあっさり失われてしまった。腰が引けて、尻餅をついてしまう。
コンクリートの床に血が滴る。もう手に何かも持って投げつけたりといった攻撃は出来そうにない。
しかも傍には、運が悪いことに投げるのにちょうどいい大きさの物も無かった。みな、ミユキとは離れたところにある。
椅子や棚、大き目の生活ゴミ(袋詰めされてる)……手の届かないもどかしさがミユキを襲う。その手も、今は酷い有様だ。
「もう終わり~?アハハハハハ、つまんないの~~~」
手を掲げて苦痛に涙すら浮かべるミユキを前にスカラマンガがようやく険しかった目つきを緩め、余裕の笑みを浮かべる。
ミユキは痛みを前にただもう、「あああ…」と意味も無く声を漏らすだけだった。
すっかり憔悴し、スカラマンガの熱で汗を流す。本当の恐怖に身を縮めるのは実は、コレがはじめてだった。
「………なによこれ。今までのと違うじゃないのよ」
ようやく、何か呟いた。涙ながらに訴える彼女の声はしかし、あまりに小さすぎて誰にも届いていない。
もうスカラマンガは間近にまで迫っている。ミユキの視界がスカラマンガの噴き出す熱による陽炎で歪む。
そして視界のど真ん中には真っ赤に燃える小娘の裸体。大事なところを隠そうともしない彼女の、燃え上がる冷笑がある。
「もしかしてもしかして~~~"イヤボーン"とか期待してないよね~~?」
スカラマンガがミユキの絶望に塗れた姿を嘲笑う。
イヤボーンとは…俗にヒロインなどが危機に陥った時、その一声が劇的な変化をもたらし状況を一変させる展開のことである。
「俗に言う"ありがち"ってやつねぇ…ま、彼女はここまでねぇ」
目の前の戦いとも呼べぬ場景を冷ややかに見ていたクリスタトスがスカラマンガの冗談にコメントを付けた。
「そうよね~~クリ姉。見てこの無様さ。キャハハハハハハハハハハ」
スカラマンガがまた高笑いをする。その笑いもまた"烈火"の如く激しく、室内に響き渡る。
ミユキはもう完全に萎えてしまって、彼女の笑みにすら「ひっ」と身を強張らせてしまう。
「おばさまもこれでやっと、雑魚戦闘員らしく、しかも"恐怖に怯えながら死ぬ"って大人気の死に様を晒せるのよねぇ~~~~!」
スカラマンガの烈火の腕(かいな)が、高々と振り上げられる……勝ち誇った彼女による、決定的なトドメの一撃。
ミユキはもう逃げることも出来そうにない。呆然とその姿を見つめる。漏らす寸前だ。
が、クリスタトスだけ様子が違った。タバコに火をつけながらこう言い放った。
同時に―――閉じられた扉の向こうからドドドドドド、という怒涛の攻めを思わせる激しい音が迫ってくる…

「いや、"ここまで"ってのは残念ながら貴女のことよ、スカラマンガ」
「―――はぁ?」



176 :タイツの人:2007/01/22(月) 02:59:30 ID:/Rvl0VVW
ドドドドドドドドドド!迫る音は物凄い勢いでこちらにやってくる。
テレビで見る動物のドキュメンタリー番組の動物の疾駆する音といえば分かるだろうか。
とにかく何か、途轍もない質量の存在が走る音が、来る!

「姉さんッッッッ!!」

ゴバァン!声と共に扉が跡形も無く吹き飛んだ!青白い波動と突風が一気に室内になだれ込む。

「……イヤボーン観測、と」
吹き込んだ風でくわえたばかりのタバコを飛ばされたクリスタトスがボソッと呟く。
彼女の手下の2人は流石に呆然として扉の向こうを見つめる。互いに手を取り合って互いを支えあう。
扉の向こうは眩い光を放っており、その中心…ちょうど扉があった位置の真ん中に、先の声の主のシルエットが浮かんでいた。
その姿を見てスカラマンガとミユキがほぼ同時に「げっ!」と驚きの声を上げる。
「―――スカラマンガだけでなく姉さんまで『げっ!』とはなんですか。『げっ!』とは…」
コツ、コツ、光の中から足音を響かせながら抜け出した影は、小柄な、スカラマンガと同じく若々しい年頃の女性だった。
クリスタトスと(かつての)スカラマンガと同じ灰色の、肩まで伸びた髪を手で整えながら彼女はぼやいた。
その場には場違いな制服姿。ネイビーブルーのブレザーに、淡い朱のスカート。そして黒いニーソックスと、革靴。
「ぶ、ブロフェルド!!」
ミユキの、汗と涙でぐしゃぐしゃになった格好の悪い顔の表情が見る見る明るくなる。
「あ、姉さん。明けましておめでとうございます」
ペコリ、ブロフェルドが年頃の乙女よりちょっと幼い印象の顔に笑みを浮かべて姉――ミユキに礼をした。
「え、え~と、あけおめ…相変わらずマイペースね」
あまりにも今さらな挨拶にミユキは手の平の痛みも忘れて呆れた。確かに、彼女と前あったのは去年の暮れだ。
スカラマンガらに捕らえられている内に新年を迎えてしまったのだ。そう思うと凄く懐かしい気もしないでもない。
「!…って痛たたたたぁ~!」
油断したミユキを掌の痛みが襲う。と、そそくさと傍に寄って来たブロフェルドがその手の惨状を見て顔色を変えた。
「まあ大変!――それっ。痛いの痛いのぉ…飛んでけ~」
心配そうにミユキの傷だらけの両の掌を優しく手で撫でるブロフェルド。自愛に満ちた手つきは傷口に当たっても全く痛くない。
「…あのねぇ~。気持ちはありがたいんだけどォ~」

見る見るうちにミユキの手の皮が再生する!HPが完全に回復した!

「…って、ウソーッ!?」
「――さぁ、反撃開始です。姉さんッ!」
ブロフェルドはそう言うと拳を握って奮い立ち、呆然と流れを見ているだけだったスカラマンガと対峙した。
これまでの苦しみは何だったのか。ミユキは今度あの自称・主に会ったらこの手でくびり殺してやろうと心に誓った。


177 :タイツの人:2007/01/22(月) 03:00:16 ID:/Rvl0VVW
「ア、アハハハハ………ちょっと……ヤバくない~?」
それまでから一変。まったく勢いの感じられない笑い声を立てながらスカラマンガがたじろいだ。
ブロフェルドがミユキに加勢することで、一気に旗色が悪くなったのだ。
彼女のテンションに呼応する発熱能力も次第に衰え始める。彼女が戦意を喪失すると、力も失われるのだ。
「相変わらず考えが浅いのですね。スカラマンガ。私が愛する兄姉のピンチを、察知できないとでも思ったのですか」
うろたえるスカラマンガを前に、ブロフェルドは毅然と言い放つ。ミユキを守るように前に出つつ、相手をけん制する。
彼女は敵に回れば全く手が付けられない破壊兵器と化す。だが味方に付ければ?―――それは、言うまでもないことである。
「久しぶりねぇ、ブロフェルド」
「…お姉さま」
緊張する両者を前に、新たなタバコを口にしつつクリスタトスが冷ややかに声をかける。
それに対しブロフェルドはミユキに対するものとは違った呼び方をする。
「お姉さま方は、やはり」
「…そう。あなた達を消す為に派遣されたの」
ブロフェルドはクリスタトスら一行全体の中にタイツの姿を認め、表情を険しくする。タイツはブロフェルドを不思議そうに見る。
「兄さんを――…」
「あら、赤ちゃんを前に"兄さん"だなんて、この娘ッたら…」
ニヤリ。クリスタトスがブロフェルドの言葉を遮って茶化す。笑った口元からは綺麗に揃った白い歯が覗いた。
「……。兎に角、兄さんと姉さんは返してもらいます」
努めて平静を装いながら、ブロフェルドはそう言い、ミユキが立つのを手伝う。彼女の腰は引けていたが、何とか立てる様だ。
手を貸してもらったミユキは「ありがと」と控えめに礼を言った。それにブロフェルドは軽い笑みで応える。

(超危機的状況なんですけど~。こんなの聞いてないしぃ~)
スカラマンガはこの後どうすべきかで一杯一杯だった。
(ぶっちゃけブロ姉になんかゼッタイ勝てっこないんだし~)
こんな時、自分はどう身を振るべきか。股を開いたって無意味だよね?ブロ姉ってレズだっけ?…絶対違うよね。
真に迫ると冗談めいた態度もなりを潜めてしまうようだ。今度はスカラマンガの頬を汗が伝う。それは、冷や汗だが。
「こんな時は…」
スカラマンガは扉が文字通り"消滅"して、今は暗い廊下が覗く出入り口を横目で見つつ、いきなり走り出した。
脳裏にとある名家の策が思い浮かんだ気がしたがきっと気のせいだろう。とにかく彼女は走った!

「こんな時は――――逃げる!!!」
が、妹からは逃げられない。すぐさま振り向いたブロフェルドがスカラマンガの背に向けて手を掲げる。
「予測済みです。覇ッ!」
彼女の手から得体の知れない青白いオーラが発生し、スカラマンガを身体ごと掴むとそのまま反対方向に投げた。
その勢いで…クリスタトスの傍にいたラバースーツ娘の一人が巻き込まれて一緒に吹っ飛ぶ。
「あっ、スク!」
「うわあっ!」「きゃあああ…ッ」
スカラマンガと、スクと呼ばれた娘は力に振るわれるまま、コンクリの壁に叩きつけられた。



178 :タイツの人:2007/01/22(月) 03:01:19 ID:/Rvl0VVW
びったーん!という音と共に壁にへばり付くスカラマンガ。
「あう!」と悲鳴を上げて背中を強打するスク。
見た目の印象が全く違う2人の女は、だがしかし同じように壁に叩きつけられていた。
ミユキは唖然と、クリスタトスとタイツはボーっとその光景を見ることしか出来なかった。
しかしラバースーツコンビの片割れであるラタだけはそうはいかない。
それまでずっとクリスタトスをガードしていた彼女が、相方の危機を前に慌てて駆けつけようとしていた。
その行為を、彼女らの敬愛する『お姉さま』であり、主であるクリスタトスが片手をラタの肩に回して止める。
主の制止にラタは納得できない。目の前で仲間が苦しんでいる。普段は冷徹な彼女も仲間意識の前では情熱的だった。
「離して下さい!お姉さまッ!」
必死に足掻くラタ。スクは床に倒れて苦痛に顔を歪めている。どこを傷つけたか、ラタからは分からない。
だが彼女の懸念は、むしろ傍で倒れ伏しているスカラマンガにあった。
彼女の能力は発動すると危険極まりない。その傍に、大切な仲間を置いておく事など出来ない。そんなのは、嫌だ。
「慌てないで。…私が連れてくるわ」
可愛い子猫を制しつつも、その意を汲んだのか…珍しく真摯な口調になってクリスタトスが歩く。が、
「くぅ~~~~!!!いっっったああああぁぁぁぁぁぁぁいいいいいぃぃぃぃ!!!」
スクより一足早く持ち直したスカラマンガがなんとか立ち上がった。パラパラと砂利が落ちる。
髪は灰色に戻り、すらりとして凹凸の少ない裸身は白い肌に戻っている。
「クッソォォ~~~~!!!!マジムカつくぅぅ~~~~~!!!!なんなのよこのインチキ難易度ォォォォ~~~~ッッ!!」
一旦戻った肌が再び熱を帯び始める。髪も逆立ち直し、怒髪天を衝く。その姿は正に烈火にして修羅の如し。
「逃げられないならぁぁぁーーーーーーー!!!!ぶっ殺コロシテヤルルルルルゥゥゥゥーーーー!!ぎゃはははははぁぁ!」
巻き舌で叫び続けるスカラマンガ。その聞くに堪えない声にブロフェルドは不愉快になって眉を寄せた。
一方、倒れたままのスクに近寄ろうとしたクリスタトスは再燃したスカラマンガを前に立ち往生する羽目になった。
慌てるラタにタイツを押し付ける。クリスタトスの後方で「きゃあ!」と声が挙がる。タイツがラタに覆いかぶさっていた。
「…洗脳による精神の退行処理は済んだわ。じゃれてるだけだから危害は加えないと思うわよ」
クリスタトスの言葉とは裏腹に、ラタはタイツに組み敷かれている。タイツとラバースーツの擦れ合う音が聴こえる。
「い、いやあっ!お姉さま!スク~ッ!」
なんでここで貞操の危機を迎えねばならないのか……ラタは訳が分からなかった。


179 :タイツの人:2007/01/22(月) 03:30:17 ID:/Rvl0VVW
後方の乱痴気騒ぎじみた事態を(なるべく)無視しながら、クリスタトスがスカラマンガの元へ向かう。
「スカラマンガぁ。落ち着きなさいよぉ~」
「うっさい!」
ゴウ、とスカラマンガの八つ当たりの熱気がクリスタトスを襲う。彼女愛用のトレンチコートが熱に当てられる。
「……だめだわこりゃ。スクだけでも――」
「寄んなババア!あっち行け!!あっちいけぇぇぇーーーーーッッ!」
「――ぐっ!」
さらに『轟!』と熱風が吹き付けられる。流石の熱気にたじろぐクリスタトス。
スカラマンガは攻撃されたことであっさり理性を引っ込め、感情だけで動く獣と変わらない姿を臆面も無く晒す。
轟々と熱量を増し、先ほど展開された熱波の世界が再現されていく。それはすぐ近くで倒れているスクには生き地獄だった。
「ああ…熱い…ッ……いやあっ……助けてぇ!お姉さまぁ!」
ようやく起き上がることが出来た彼女は熱波で喉を焼かれつつもクリスタトスに助けを請い、必死に手を伸ばす。
ラバースーツの破れた部分は肌を露出している。その皮膚にスカラマンガの熱が容赦なく浴びせかけられる。
だがクリスタトスはもう、近寄ることは出来そうもなかった。表面は焦っているが、内面は窺い知れない。
「スカラマンガ、お姉さまが困ってます」
仕方なくブロフェルドが助け舟を出した――ーつもりだったが、それは火に油を注いだだけだった。
「はあ!?バッカ!バッカじゃないノ!ダレのせいでこんな…こんッ…んっがあああああAAAHHHHHAAAaaaa!!!」
スカラマンガはより一層激昂してしまい、言ってることも支離滅裂になってきている。
遂に最高潮に達して全身が真っ赤に燃え上がる。そのまま火の玉になりそうな勢いだ。
「ちょ…アイツ、なんかエライコトになってない…」
ミユキがその尋常ならざる姿を前にしてブロフェルドの袖を引っ張る。
「彼女は一度怒るとずっとあの調子なんです。怒りが治まるまでは、荒れ狂い続けるでしょう――…」
最後に、あれでも姉妹なんですけどね、と言った彼女の顔は呆れよりむしろ、哀れみを含んでいた。
燃え上がり続けるスカラマンガが足を進め始める。そのすぐ横にスクが倒れている。
「あ…ああ……もう駄目……」
遂に体力の限界に達し、力尽きようとするスクのその一言が、スカラマンガに届き…届いてしまった。
「黙れッ!この糞がッ!」
そう吐き捨てるとスカラマンガは真っ赤な手で倒れたスクの、ラバー越しに乳首が浮かぶ大きな胸を鷲掴みにした。
途端、その熱で接触している部分から煙が立ち昇る。それは瞬時にスーツを焼き切り、彼女の胸を焼く。
「!!!!!ッッッ……きゃああああああああッ!」
耳をつんざく悲鳴に、ラタが悲鳴を上げる。が、タイツを押しのけることが出来ずにその場で空しくもがく事しかできない。
「! いやあッ!スク!スクがぁ!」
クリスタトスにより赤子同然にまで退行されたのがこの時ばかりは裏目に出た。大人のままの力でラタは無遠慮に押される。
そうしている間にも、スクはスカラマンガの八つ当たりに晒され続けていた。


180 :タイツの人:2007/01/22(月) 04:02:20 ID:/Rvl0VVW
物凄い熱を発する手の平が饅頭を握り潰す勢いでスクの右胸の膨らみを掴む。
そして、それはすぐに"その通り"になった。
ぐじゅっ…というよく分からない音がミユキにもはっきり聞こえた。
「あっがああ……嗚呼………」
力無く絶望の声を漏らすスク。小水を漏らすが、その黄色い流水はスカラマンガに触れることなく蒸発し、霧散する。
それすらも、今のスカラマンガを刺激するには十分だった。蒸気が僅かに彼女の鼻腔に届いただけで感情が激化した。
「くっせえええええ!!!この汚物がああああああああああッッッッ!!!」
力任せに彼女を抱え上げるスカラマンガ。見る見るうちにラバースーツが燃え尽き、全裸になるラタに、
それまで見せた氷のような印象は欠片も残っていなかった。氷は解け、溶け出る水は氷が全て水に変わるまで、止め処なく流れる。
短く切り揃えていた髪もあまりの熱にチリチリと焦げて逆立つ。涙は流れる端から、かき消えていく。
触れるだけ妬き尽くされるスカラマンガの力に、抗う術など彼女には無い。裸身が焼け焦げていく。
そして手を離したスカラマンガは"自分がすっきりする為だけに彼女を殺そう"として、声を張り上げる。
「汚物は消毒だあああああああああ―――――――がっ!?」

だが、クリスタトスがそれを許さない。彼女はスカラマンガの背に向けて片手をかざしている。
「――ハンタースネイク。敵の内部に潜り込み、内臓を食い荒らす」

「ぃいぎいいいぃぃぃぃッッッ!!?? あぎゃあああああ!!AAHHHAAAA?!?!?」
スカラマンガが、突然苦しみだした。頭を掻き毟り意味不明な叫ぶを上げ続ける。その身体から、急速に熱が冷めていく。
黒焦げ一歩手前に陥ったラクは糸が切れた人形のようにその場に倒れこむ。それを、クリスタトスが抱きかかえる。
「…悪いけどこの娘を治しておいてくれない?」
そう投げやりに言ってブロフェルドに投げて寄越した。その無残な姿を見てミユキは息を呑んだがブロフェルドは応じた。
「制御不能な悪い子は……お仕置きしないとねぇ~」
クリスタトスは暴走するスカラマンガが苦しむ様を、とても楽しそうに笑って見ている。
スカラマンガは血走った…いや、文字通り真っ赤になった瞳で、憎悪で相手を殺そうとするかのような勢いで彼女を睨む。
「ぐっぐぐぐぐぐ……ぐ、グリズダドズゥゥ!!」
濁声で喚く彼女に対しても、クリスタトスは冷笑を崩さない。熱を浴びてボロボロになったスーツの端を持ち上げる。
「もともと…今回指名されたのは"私たち"のほう。貴女はオマケ。立場をわきまえるべきだったわねぇ…」
蛇のように舌を出す彼女。ミユキは寒気を覚えると共に、彼女が言った『ハンタースネイク』が気になった。
そして、その答えはすぐ…しかも意外な形で出る形になる。

「ぎっ!?――――…… いっ……」
それまで"烈火"のごとく燃え続けたスカラマンガの、提灯花火を思わせる最期の声と一緒に―――その首筋から答えが顔を出す。
「おいでぇ…可愛いスネイクちゃん…」
銀色に輝く人工の蛇(スネイク)が、獲物を食い荒らして彼女の喉を食い破って現れるのを、ミユキは見た。
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