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作者:タイツ仮面作者さん、通称タイツの人さん
投稿日時:2006/05/22(月) 12:29:05
備考:コンセプトは『強いロリ悪女』。




“地下13階に気をつけろ…”
――それはダンジョン攻略を目指す冒険者の間でまことしやかに囁かれる噂。
それが何を意味するのかを正確に知るものは少ない。
ただ一つ明確なのは…それが確実に命にかかわる事である、ということ。
何に対してなのかは不明だが、13階以降を行く者はその階はとりあえず足早に去ることを鉄則としている。

「おーい、回復薬取ってくれぇ」
「あいよー。ハイポでいいかぁ?」
「おう。さんきゅ」
ドワーフのブッハが盗賊のパイオからハイポーションを受け取る。
薄暗い通路に淡い蒼の光が燈る。ブッハの傷が見る見る癒えていった。
「ねぇ、そろそろ戻ったほうがいいんじゃない?アイテム少なくなってきたよ?」
エルフのアルテが弱気の表れた声で俺に話しかけてきた。
「…ん?」
言われて点検してみると、用心して用意した回復薬が底をついてきていた。
「まさかここで悪魔が出るとはな~」
パイオが眉間に皺を寄せて呟く。
迷宮の深部にあるという次元の扉。そこから這い出るという魔界の住人――悪魔(デーモン)。
本来なら強者しか近寄れぬはずの地下20階以降にしか出ぬはずの化け物どもだ。
詠唱なしに魔術を放つ彼らは人間とは格の違う領域で冒険者を死に陥れんと攻めてくる。
…それがここ12階で、しかも背後から奇襲をかけてきたのだ。
俺たちは慌ててアイテム・魔術を駆使して戦い、なんとか倒すことに成功した。
「でも、ま、命が助かっただけ良かったし、戦利品もあったから悪いことばかりではないわな」
そう言ってパイオが右手に持って袋の中身を取り出す。
「悪魔の報酬…」
アルテが呟く。パイオの持つそれは我々の知る如何なる物とも違う色をした、野球のボールぐらいの大きさの宝石だった。
悪魔が冒険者に戦いを挑むのは何も取って食おうというわけではない。
彼らは我々に『戦い』を挑んでくるのだ。純粋に。力と力のぶつかり合いを目的に襲ってくるのだ。
そこに正々堂々などない。だから不意打ちも平気でやる。時には集団リンチじみた事も起こる。
人間の言葉を話すことなどない連中からその意を汲み取ったのは…無論戦った冒険者たち自身だった。
戦いに勝った時、悪魔は傷ついた体で冒険者に膝をつき…アイテムを差し出して息絶える。
最初は何かの冗談だと言われていたが、例が増えるにつれて「どうもそうらしい」との解釈に至った。
そしてそれはいつからか「悪魔の報酬」と呼ばれ、人々に様様な形で受け取られる特別な存在と化した。
悪魔連中の思惑は分からないが、ここのダンジョンに棲む彼らがやることはこれだけのようだった。
人界侵略など考えず此処で訪れる者に戦いを挑む――ここの悪魔は皆その様だった。
それは宝と最深部への羨望を抱いて進入する我々冒険家と似た気持ちなのかも知れない……

俺たちが戦った「角の生えた猿の悪魔」も致命傷を受けると、急に俺たちの前に座し、宝石を寄越して倒れた。
その顔は何故か満たされた感があり、奇襲をかけてきたとはいえ俺たちの動きを見るや真正面からの戦闘に切り替えた。
まるで試すかのような…いや、実際に試されたのかもしれない。そして勝利の報酬でその力にむくいるのだ。
その戦利品を肴(さかな)にしつつ、俺たちはキャンプで一休みしていた。
「たしかにこんな浅い階層で入手できたのは僥倖だけれど、なんだか怖いわ」
いつもは気丈な女エルフもこの宝石を見る時は恐れを隠し切れずにいた。
彼女たち『森の人』にとって悪魔自身は忌むべきとはしないが、このような得体の知れない物への警戒は強い。
「へっ。呪いはかかってないって言ったじゃねぇか」
ブッハは腰を上げて伸びをしながら文句を垂れる。悪魔との戦闘で負傷した両膝は綺麗に治癒されたようだ。
「嫌なものは嫌なのよ。どっかの強欲と一緒にしないでくれる?」
「おい。ここでそれを言うかよ。潔癖なエルフさんよ…」
ぶんむくれるエルフと拗ねるドワーフ。これは彼らの種族間の仲の悪さが端的に出ている会話だ。
もっとも、二人ともほんきでやってるわけではないが…
「よしなよ旦那。アルテさんも」
「「あんたは黙ってろ(黙ってて)」」
「うぐ。び、ビルド~」
息の合った二人の声に打たれた盗賊が俺の名を呼ぶ。
俺は戦士の武器である鋼の剣を収めた鞘を腰に付けて腰を上げた。
いつもの言い争い(主に種族の優劣について)を繰り広げる仲間を諌め、俺たちはキャンプを出た。
たった一度の不慮の自体で備えが不十分になった。もう一度などあっては堪らない。
パイオとアルテの提案から、俺たちは地上を目指すことにした。
「出直しかぁ。もしそれ(宝石)が高く売れたら、魔法防御の鎧が欲しいのぉ」
「同感ね。連中ったら節操なく魔術を撃ってくるんだもの。楯を構えて防ぐのも限界があるわ」
先程とは打って変わって意見が同調し合っている二人を前に、パイオはヤレヤレのポーズを見せた。
「…にしても不思議な輝きだよね」
また袋から取り出して宝石を眺めるパイオ。この男は盗賊と鑑定士の両方のスキルに長ける。
が、その鑑定眼をもってしても件の宝石は分からないとの事だった。
"この世のものではなく、あっち――魔界の物でしょーね"とのコメントがあったのみ。なんともアバウトだ。
それを聞いてブッハは"お宝には違いねぇや"と言い、アルテは"呪いは無いけど、なんか怖いな~"と漏らした。
宝石の輝きは、ピンク?色。だが輝くというよりはその逆かもしれない。神秘的、でいいかもしれない。
とにかく俺にとっても得体の知れないソレは、どんな物かは地上の知識陣に聞いてみないと判断のつかないブツに過ぎない。
疲れも拭いきれないし、早々に帰ろう―――。
と、その時、

「遊ぼうよ…」

幼い、女の子の声が聴こえた…気がした。

「なぁ…今」「なにか声が…」「聞こえた」「よなぁ?」
俺たちは一斉に立ち止まり、先程の声への疑問を口にした。
いつも力強いブッハも少し調子を落として真剣な顔つきになっている。
「子供の声…」「だったわよね?」
エルフのアルテが横から言葉を接いだ。ブッハが少しムっとなったがすぐに周囲に意識を戻す。
「階下からだね」
4人中最も耳ざといパイオが姿勢を低くして足元を見つめる。
「下…13階、か」
俺もブッハもアルテも、13階という考えに思いを巡らす。
『13階には気をつけろ』の警告。そこから聴こえる――

「おいでよ…」

女の子の声。明らかに、異様だ。
魔物の闊歩するダンジョンの、それも13階に幼子が居ようなど、普通には考えられない事態だ。
みなそれには気づいている。問題は、
「どうする?無視するか?」
俺の思考をブッハが断絶する。顔を上げてそれぞれの目を見た。
みな不安げだが怖がってはいない。得体の知れない、少なくとも人ではなさそうな何か。
それを前にして去る、それは回復薬の在庫も乏しい俺たちには情けなくも懸命な手なのだ。
いや、恥じることも無い。最悪。悪魔との戦闘が待ち受けている可能性もゼロではない。
その能力の優劣こそあれ、疲弊した俺たちのうちで犠牲が出る可能性があるのを見過ごすことはできない。
「階下から誘ってくる相手よ。間違いなくやばい相手だわ」
彼女の口から"やばい"という単語が出るのは珍しい。が、本気で危険を感じているということの表れでもある。
「そうだな」
「はやく去りやしょう」
俺が結論を出す前にパイオの奴が方針を決めた。その心はすでに地上に飛んでいるに違いない。
素早く手製のマップを取り出して来た道のチェックを始める。呆れるつもりは無いが気が削がれる思いをした。
「10階まで行けば王宮の設けてくれた転送の陣がある」
「それで一気にズラかろうぜ」
マップを覗き込みながら相談する。アルテはパイオがマップ上で走らせている指先を目で追っている。
「――よし。こっちだ」
いつもは2番手3番手を歩くパイオが我先にと先頭に立って歩き出す。
頼りがいのある姿に、俺は先程失せた気力がちょっと戻るのを感じつつ、足を進める。
その後ろにアルテ。得意の弓を携え、辺りに勘を巡らせながら着いてくる。
最後尾はブッハが守る。その手には悪魔を仕留めたバトルアックスを握っている。
後ろと周囲の気配りを二人に任せ、俺は前列のパイオをいつでも庇いに行ける用意を整えることにした。
魔術を弾く楯を構え、暗闇に神経を集中する。道をたどる事に専念するパイオの楯となるために。
俺たち4人はゆっくりと元来た道を戻る。

「どこにいくの?」

声は、いまだ聴こえてくる……
そして、俺たちは階段の所まで戻ってきた。

下へと続く階段を――……

「ちょっ…なんで13階に続く階段に着いちゃうの?」
「そ、そんな、確かに」
パイオは慌ててマップを見直す。だが、
「間違いないな。辺りの地形や通ってきた道からするに、これが元来た階段だぜ」
ブッハが確信をもって言う。俺もその言葉に異論は無い。
「ああ。ここまで正確にたどって、そしてこの階段に着いたんだ…ただ、上下が変わってるけどな」
ダンジョンには様々なトラップがある。
落とし穴・吊り天井・宝箱もどきのミミック・化け物だらけの通称「怪物の詰め所」…だが、
「階段が入れ替わってるなんて聞いたこと無いわよ?」
俺の心の言葉をアルテが代弁する。そう。そんな話は知らない。あるとすれば、魔術。
「声の主の仕業かな?」
パイオが怯えた調子で呟く。地上へ飛んでった心は此処に戻ってきているみたいだ。
期待が無くなって望みが薄くなってきているのが見て取れる。マップの端が強く握られてひしゃげる。

「ふふふ」

「ひゃあっ!?」
女の子の笑い声―らしき声に文字通り飛び上がるパイオ。ブッハが斧を構えなおす。
アルテが矢を階下の暗闇へ向け、俺は剣を抜く体勢に入る。

「こっち。こっちだよ」

瞬間。

「…ぅあ…」意識が…。
「ビルド?…ぁ」アルテの声が聴こえ、
「二人ともどうし…ぐっ!」ブッハがうめき、
「頭が…」パイオがたじろぐ。

「こっちにおいでよ…ふふふ」女の子の愉しそうな声が頭の中に木霊した。
そして、俺の意識は下に向かって、飛んだ。多分、ほかの3人の意識も…

気づけば、俺は真っ暗闇に一人立っている。
俺たちの入っているダンジョンは通路を構成している石自体が光を放っていて、光源なしでも探検できる。
石の光る理由などは俺の知ったことではないが、確かなことは冒険が楽だということだ。
だが、ここにはそれがない。
光の加減で明暗こそ珍しくなかったが、完全な"闇"は今まで体感したことが無かった。
分かるのはいつも通りの荒い石畳の感触と肌寒い空気だけだ。

「やっと来たね」

不意に、目の前、本当に目前で声がした。あの、女の子の声だ。
俺ははっとなって前を見た。
「こんばんわ、戦士のお兄ちゃん」
そこには…ケラケラと愉しげに笑う女の子。見た目は間違いなく人間だが、
周囲は妖しげに―あの宝石のように桃色に―ほの暗く光っていて、おかげでその輪郭がはっきりして見える。
俺は何気なく自分の身辺を確かめた。…特に何も失ってはいないようだ。少なくとも、自分は。
「…仲間はどこだ?」
「知らなぁい」
そいつは我関せずといった風に答えた。つま先でぐりぐりと石畳を弄る。
容姿・服装は街にいる、農家の娘といった風貌だ。特別な感じはしないが、それが逆に、不思議だ。
「…きみは誰だ?」
本当は「貴様」や「お前」と呼びたかったが、見た目に釣られてつい口調を和らげてしまった。
刺激しないように、と考えたところで目の前の娘は、さっきとはうって変わって嬉しげな様子で答えた。
「あたしはバンデッタ。見ての通りの女の子だよー」
バンデッタ――それが少女の名前らしい。その響きに聞き覚えはあるが、意味はわからない。
女の子らしいような、全く合ってないような。そんな感覚。10歳あるかないかの少女は今度はこっちに質問する。
「お兄ちゃん…ビルドはここに何しに来たのー?」
「…何しにって、分からないか?」
「えー?」
『わかんないなー』と指をアゴに当てて可愛げ一杯に返すバンデッタ。
…俺の名前をどうして知ってるのかは問題ではないので聞かなかった。相手は只者ではないのが分かるからだ。
「きみは悪魔なのか?」
「んー?そうかもー?」
その場でクルクル回転して遊んでいる。その右手にはいつの間にか樫の木の杖が握られている。
街でも売っている品なのですぐに分かった。
「ビルドは人間だよねー?」
「ああ。そうだ」
「にんげんさんなんだよねー」
「見れば分かるだろう?」
「わかるよー?」
…なんか疲れる。階下から聞こえてきていた時の不気味さは何処へやら。
「えへへー」
そいつは愉しそうに杖を振り回して踊っている、ように見える。
「なにが目的で「にんげんさんゲットだぁー」
頭に浮かんだ疑問を口にする途中でバンデッタが声を上げた。実に嬉しそうだ。
その「ゲット」というのがとても引っかかるが。
「さっきドワーフ見つけたけど、あれで何人目だったかなー?」
『んーと』と指折り数を数える女の子。その様子は普通に街で遊ぶ女の子そのものだ。
「って、待て。ドワーフだと?」
「え?そーだよ?ぶっはって変な名前ー」
『あははー』と笑って杖をクルクル回す。"ブッハ"。それは間違いなく
「すぐ死んじゃって面白くないんだー」
ぶーたれる子供。頬を膨らませてそれらしく怒っている。
ブッハ。死んじゃって。俺は彼女の放つ単語を理解しきれずにいた。

今この娘は何と言った?死?

困惑する俺の傍に何かが歩いてくる気配がした。慌てて振り返り、
「………っ」
息を呑んだ。そして吐き気をもよおす。
そこには…
「なんでドワーフって野蛮なのかなー」
自身の両腕で自身の頭部に斧を振り落とした姿で"歩いてくる"ブッハの姿だった。
その目に光は無く、血がボタボタと地面に落ちる。
俺はたまらず吐いてしまった。
人形のように意思なく歩く友の変わり果てた姿に、俺は恐怖と嫌悪を覚えてしまった。
「やめろっていったのに、分からず屋さん♪」
バンデッタがそのブッハだったモノにちょん、と指先を当てる。
瞬間、立ち止まって揺らいだが、ソレはすぐに歩行を開始し、元出た闇の中に消えていってしまった――

「そーだ。あれで4人目だぁ」
パッと華やいだ表情でバンデッタが喜んだ。
「あれは、お前がやったのか」
俺は気分の悪さに脱しきれぬまま彼女を睨みつけた。が、相手は全く動じない。
「違うよー。止めたのに振るうからああなるんだよー」
ああなる、とは、つまりあのような無残な――斧が自分に返るようなことのことか。
徐々にだが怒りが込み上げてきた。だがここで痺れを切らす訳にはいかない。
相手がこちらに何かをする気配も無いし、先攻してブッハのようになっては終わりだ。
「まさかアルテとパイオも?」
「会ったかもねー。会ったよー」
矛盾する回答。俺は既に接触していると判断した。
バンデッタが奥へすっと消えて、すぐに出てきた。そして俺の足元に一つの袋を投げて寄越す。
転がるそれには血が付着していた。最後に見たときは土による汚れしか付いてなかったのに。
「パイオって背の小さいホビットだよね。2ゲット目だー」
「パイオは背は小さいが人間だよ。で、またしても『ゲット』ってことは」
袋から宝石が出てきた。俺はそれを拾いつつ視線を彼女に向ける。
「そ。会ってる会ってるぅ♪悲鳴上げて逃げたから、逃がしてあげたよー」
「…そ、そうか」
その言葉に、俺は安堵を覚えて――
「でも多分生きてないね」
次の言葉で望みが絶たれる思いを味わった。
「だって走っていっちゃったけど、全然出口の方向じゃないし。あっちは確か…グレーターデーモンが」
「ぐ、グレ…っ!」
俺は絶句した。グレーターデーモン。地下30階以降で目撃される上級悪魔だ。
「って言ってもそれは人間さんの呼び名で、此処にいるのはバルログっていって火の魔神だけどね」
その口調はそれまでと違って若干大人びたものになっているが、愉しそうなノリは依然変わらないままだ。

その直後、遠くで友の悲鳴が聞こえた気がした。きっと気のせいだろう。そう信じたい。

「エルフはどうした」
「察しの通り。もー会ってるよーん」
再びふざけた口調でバンデッタが回る。この踊りもいい加減癇に障る。
「ビルドお兄ちゃんが一番おねぼうさんだったよー。アルテちゃんは2番目おねぼうさんー」
「…あれは朝が弱いからな」
もう何のことか分からん。俺は諦観を込めて相手をしている。
ブッハ。そして(おそらく)パイオを喪った喪失感が沸々とこみ上げてくる。
しかし、心は乾いて、涙も流せない。
体は何の束縛も受けていない。だが、金縛りに遭ったかのごとく、動かない。
自身の気持ちが己に呪いをかけたかのようだ。俺はもうただ、歯を食いしばっていた。
「あの娘に会いたい?」
そんな俺に急接近してきて、俺の顔を下から覗き込みながらバンデッタが囁く。正しく悪魔の囁きか。
これが醜悪なゴブリン顔ならゲロ臭いツバでも吐いてやりたいが、今それをこの少女にするのは自殺行為かもしれない。
抜刀の速さに自信はある。が、ブッハの姿が俺を躊躇わせる。それは同時に、亡き友からの警告にも感じられた。
俺の腰までしかない身長の少女は、嬉しげに回って奥へ消え、10秒くらいで
「連れてきたよー」と、アルテの手を引いて戻ってきた。
アルテの見た目は別れた時のままだ。どこも怪我していないみたいだが、その顔は青ざめている。
「ビルド……ブッハが…」
「ああ、知ってる」
あれを見たのか。ならばその顔色の悪さも分かる。俺たちは突然の仲間の死を悲しみきれず、
俺とアルテの、ちょうど真ん中に立って調子よくスキップしているバンデッタを凝視した。
「エルフはもう6人目だけど、女の子は初めてなんだよねー」
「なんだと」
俺は彼女よりも早くバンデッタに食ってかかった。初めて相手に大して声を荒げる。
もう限界にきていた。アルテは瞬間キョトンとしたが、すぐに不安を顔に出してバンデッタを見つめる。
「そんな怖い顔しないでー怖いよー」
バンデッタがブルブルと振るえる仕草をする。が、もう相手にしない。
「ふざけるな!俺たちをなんだと…」
「獲物だ」
不意に、少女の口調が変わる。
「お前たちは…あたしのエモノだよー」
また口調が子供子供したものに戻る。
「これは遊びだよー?わたしたちの、ひまつぶしー」
それまで気にも留めなかった目が、真紅の目が妖しく光った。

「悪魔にとってここに入ってくる君たちは絶好の獲物」
明るく、自己を顕示しながら詠うように喋る。
「時には戦って、時には虐めて……時々犯す」
「そうして殺め殺められ、束の間の娯楽を楽しむ」
「…束の間のって?」
アルテが弓に手をかけつつ距離を取り、俺も剣に手をかけてバンデッタを睨む。
「無論ー」
ここでバンデッタはピ、と人差し指を立てた。
「我々の悲願。地上の制圧」
また、口調が歪む。その調子は老獪な響きを孕んでいる。その目からも幼さが失せる。
その小さな肢体には人ならざる魔力が蓄えられている。果たして…
「勝てる気でいるの?」
クルリとあどけない笑顔をこちらに向ける。この切り替えの早さも不気味だ。
「下等生物諸君。お前たちは格好の玩具だ」
こちらに顔を向けたまま、右手をアルテに…彼女の顔に恐怖が浮かぶ。
「ひ…」
「やめ…」
俺は必死で腕をアルテに向けて伸ばした。
刹那、バンデッタの手のひらから何かが飛び出て、アルテの顔面にべちゃりと付着した。
その勢いで彼女はその場に尻餅をついた。
「…んがんご…っ!」
顔には緑色の粘液。スライムか。引き剥がそうとしたが俺の手にも巻きついてきた。冷たく、柔らかい。
アルテは慌てているが息苦しそうではない。パニックに陥って手足をばたつかせている。
「あははははは。無様。無様よ。あはははは」
その様を見てバンデッタが腹を抱えて笑っている。
なんとかスライムを引き剥がした。アルテはゴホゴホと咳き込む。
「くっ!ふざけやがって!」
宝石を転がし、俺は剣を抜いてバンデッタと相対する。
そのとき、背後で呻き声が挙がった。

「アルテ?」
俺は慌てて背後を見た。
「…ん、ぁあ…」
すると、アルテが服を両手で掻き毟っている。
「…何をした!?」
俺は怒りを露にバンデッタに食ってかかった。彼女は笑いながら応える。
「さっきのスライムに仕掛けがしてあるの。ちょっとした実験よー」
子供のする悪戯っぽい笑み。アルテは弓を捨て、矢を放り、媚態を露に体を捻らせる。
「はぁ……ぁ。からだ。体が、あぁぁ……」
上着を破り、髪を掻き上げ、全ての衣服を脱ぎにかかる。
「あ、ぁぁ…はぁ…あつい。あついよ」
「なっ!?アルテ!やめるんだ!しっか…うがっ」
体を電撃のようなものが走る。さっきと違い、今度は本当に金縛りにかかってしまった。
「こらこら、邪魔をしないの」
俺の体を魔術で縛りつけつつ、バンデッタがアルテに近づく。
己が手によって見る見るうちに裸になっていくアルテ。その美しい肢体が次第に暴かれていく。
「んあっ……かゆい、かゆい…あつい……あ…っ…つっ……」
無駄のない細い体をそのか細い腕で抱き、大きくはないが形の良い胸を、乳房を指先で弄ぶ。
足を大胆に開き、秘所は早くも濡れてきている様だ。
「あぁ…たす……ビルド……ん……んん……っ」
仰向けになって、舌で自分の体を舐める。指先で自身を愛撫する。
最早、正気の欠片も見えない。自慰に従事する女エルフを、少女の姿の悪魔が舐めるように観察する。
「あら、ちょっと早いような…」
バンデッタが気になる呟きを漏らす。それをいぶかしむ間もなく、アルテの状態が変わる。
「あっ……あっ……んぁぁああ!」
「アルテ!?アルテ!」
それまで痴態を晒していた彼女が、突然苦しみだしたのだ。
悶えるのとは違う。それは苦痛に歪んでいる。爪を立てて胸を掻く。
紅潮した顔が土気色を帯び始め、涙と涎を垂れ流す。それは…
「人って脆いのねーもう死んじゃいそうなんて」
思案顔でバンデッタが言う。
死…俺はその言葉を反芻しながら体を動かそうと懸命に身をよじる。が、全く動かない。
彼女の掻き毟った跡は傷になり血が浮かび、下半身からも血が流れる。
「ビ…ド、………た…す………っ……!」

ゴボリ!口から噴出すように血があふれ、彼女は脱力して絶命した。
「あーははははぁ。面白!おもしろーい!」
両腕を上げて大喜びする少女。俺の限界はとうに過ぎ、もはや殺意しか残らない。
眼下のアルテは血まみれで力なく倒れ、その美しかった肢体は変わり果てた姿を石畳の上に晒す。
その顔は苦痛も通り抜け、虚ろな表情でこちらを見つめたまま逝っている。
「媚薬のつもりがすごいことになっちゃったねー!」
そこでこっちを見てニヤリと笑う。
俺はただ、目前で助けられなかったエルフへのやり切れぬ想いに打ちひしがれつつも、悪魔への憎悪を膨らませていた。
「今度はアルテちゃん愛しのビルドお兄ちゃんの番だよー」
杖を片手にバンデッタが近づいてくる。
俺はその愛らしく見えなくもない顔にツバを浴びせ…ようとしてかわされた。
「もー汚いなー」
そう言いつつ、杖の先で俺の胸を小突いた。
「そんなばっちいお兄ちゃんは、いっそ汚い花火になっちゃえー」
ケラケラ笑いながらバンデッタが距離をおく。
途中、アルテの亡骸を飛び越えて、その向こうに広がる闇と同化する。
そして声だけが聞こえてくる…。
「あと10秒で爆発だよー」
10秒、その声とともに俺の中で何かが悲鳴をあげる。
「ぐぁ!」
体を激痛が走る。血が、血が逆流する。
「飛び散れ下等生物ー」
虚空から『あははははー』と馬鹿らしい笑い声が聞こえてくる。
気配が四方から発せられ、はたしてどこからのものか全く分からない。
体の痛みは増すばかりだ。汗はダラダラと流れつづけ、彼方此方から血が噴出す。
どうやら、ほんとうにはなびになってしまうようだ……
「あと5秒ー。あははははー」
「っ!っっ!」
もはや声も上げられない。体を構成する全てが何かに変わる、そんな気がする。
「なかなか面白かったよおにいちゃーん!」
もうこの悪魔の声など聞いていられない。ただ、足元のアルテが哀れでならない。
「畜生!畜生!」
声が、出る。血とともに慟哭が露出する。
「糞!糞!糞!くっ…」

"―――汝、何を哭いておる?"

「……?」
ついにイカレたか。頭の中で声が聞こえた。

"――我は怨嗟に応えるもの"

その声は直接頭に響いてくる。
時間はもう幾ばくもないはずなのに、その間は時間的余裕が感じられる。

"―――汝、時間がないな?早く言え"

宝石の癖に五月蝿いな。なにを言えってんだ?
もう声にもならない。否、口などない気がする。目も鼻も耳も、指も腕も、滅びている気がする。
が、しかし、そいつははっきりと応じてくれた。

"我は呪いをもたらす。我が呪いにその先を示せ"

偉そうな奴だな。ならあの小娘を黙らせてくれ。

"――それだけで良いのか?"

ああ。どうせなら永遠に黙らせてやってくれないか。

"――永続の呪いは我では無理だ"

なら、いっそ死でイイや。早くしてくれ。もうしんどいんだ。

"――了承した……では、さらばだ。我が主よ"

ああ。まかせたぜ…。
俺は眠ることにした。なんだか分からんが、少し気が晴れた。

そして、一人の戦士が火を吹いて飛び散った。

閃光が、疾る。

「あーははははははぁ」
少女の姿の悪魔が、笑う。

その直後、

「あはは……」

その光の中から一振りの剣が現れた。

「!?」
慌てて回避しようとするも―――時既に遅し。
その鋼の剣が少女の小さな胸を貫く…

「がっ!…………」

人と同じ赤い血を流し少女は宙に静止する。

「な、なぜ……」

これはたしか、あの人間が持っていたもの。偶然か。しかし彼女には分からない。
こんなものが我が身体を容易く貫くなど……魔術すら帯びぬ鉄の固まり風情が…

「あ……ヴェンデッタ……御主さ、ま………」

――しばらくして、その身体から魔力が抜け落ち、固い石畳の上に小さな身体が叩きつけられて、暗闇に静寂が戻った。
その場にはバラバラの肉塊と二つの少女の遺体。それと、こなごなに砕け散った"ただの石ころ"が遺された。

こうして4人の冒険者が消えた。
流浪の旅人だった彼らを気に止めるものは少なく、宿屋や酒場の者が心配する程度だった。
それも時とともに忘れられていき、新たな冒険者がダンジョンへ次々と挑んでいく日々が流れていく。

やがてバンデッタの言った通り悪魔の本格的地上侵攻が始まり、世は混迷を極めることになる。
が、それはこれはまた別の物語である。

~完~




作者あとがき:
…ってことで、終わりです。なんか当初の物とかけ離れてるな。
正直、エロと子供ネタが苦手なんで不慣れな感じが隠せてないと思う。
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